2010年4月27日火曜日

文鳥堂とワンダーランド

■小学6年生のときだったか、近所の文鳥堂という本屋に行って「注文の多い料理店」を探した。
文庫から何からいろいろ探したつもりだったんだけど、どこにも無い。
で、児童書コーナーを見たら「注文の多い料理店」の絵本があった。
まあ絵本でもいいかと思ってその絵本を持ってレジに行くと、文鳥堂の店主は「これは子供用の絵本だけど、いいの?」と聞いてくる。
僕はとにかく「注文の多い料理店」の文章が載ってればなんでもよかったので「うん」とうなずく。
この絵本の絵には何にも感じなかったけど、文章の方はやっぱり面白かった。
「注文の多い料理店」は最初どこで読んだのか正確には覚えてないんだけど、たぶん塾のテキストか模試か何かに載ってて、それで気になったのだ。
あのとき文庫か何かで買ってたら宮沢賢治の他の話にも親しんでただろうかと思うとなんとも残念だが、とにかく僕はそれ以降しばらく宮沢賢治には遭遇することがなかった。
最近ふとしたきっかけで宮沢賢治を読むようになって、これがどういうわけか面白い。
小学生のときに読んでもなんだか分からなかったかもしれない。

ところで「注文の多い料理店」を買った文鳥堂という本屋。
今はもう無い。
小学生のころに通ってた本屋はこの文鳥堂のほかにワンダーランドというところがあって、そちらももう無い。
この文鳥堂とワンダーランドで僕は漫画や雑誌を買いまくった。
暇なときには、いや、別に暇じゃなくても文鳥堂とワンダーランドで立ち読みをしてた。
夏休みなどには高校野球を見終わるとこのどちらかに駆け込み、ぶらぶらと店内を見てまわる。
このふたつの本屋にある本が、世界にある本のすべてだった。
文鳥堂は本屋独特のにおいがして、それがとても気持ちいい。
決して大きな本屋ではないけど、僕にとってはじゅうぶんすぎる広さ。
意味の分からぬマニアックな雑誌などを見るのも好きだった。
僕が初めて漫画本を買ったのはこの店だ。
レジの横の棚が漫画コーナーになってて、いつもここで面白い漫画本を発見する。
ワンダーランドの方はいつもBGMが流れてて、何故かよくビージーズが流れてた。
文鳥堂よりも洗練された店内で、2階は文房具売り場。
となりにはマリオというおもちゃ屋があって、こちらにもよく入り浸っていた。
コロコロコミックの創刊号を買ったのはこのワンダーランド(4年生のとき)。

どこかの本屋に入り、本屋のにおいを感じるときには、いつも文鳥堂とワンダーランドの店内の光景がちょっとだけ頭に浮かぶ。
自分の中にある文鳥堂とワンダーランドという空間に入り、ちょっと落ち着くのだ。
今でも本屋が好きなのは文鳥堂とワンダーランドの楽しい記憶があるからかもしれない。